成功事例インタビュー

2019年9月13日

クラウドファンディングがつなげる、 魅力あふれるアニメの「聖地」。 若者が行き交う大槌町。

岩手県沿岸のほぼ中央に位置する大槌町は、山海の幸に恵まれ、水産業を主な産業とする町である。東日本大震
災直後の津波により沿岸エリアは壊滅的被害を受けた。新たなまちづくりを手掛けるが、震災以前から若い世代の人口流出・過疎化という課題を抱えていた。そこで平舘豊さんは「大槌のまちに、多くの若者を呼び込みたい」と、「三陸聖地化委員会」を立ち上げイベントを計画。資金調達のためクラウドファンディング(以下、CF)公開へ踏み出した。

CFで資金調達と情報拡散を図る。イケメン鉄道ダンシキャラが、まちの救世主に。

「大槌町をアニメの『聖地』へ」、それが三陸聖地化委員会を立ち上げた理由だった。世界中の若者が集まるアニメの舞台「聖地」。大槌町から新たなアニメ文化を発信し、聖地化してコンテンツツーリズム(舞台になった場所を巡礼する)の波をつくり、交流人口を増やそうというアイディアである。
大槌町役場職員であった平舘さんは、震災後に職を辞し、IT企業を設立する。「三陸エリアは若者の受け皿が少ない地域です。IT産業は若者にとって魅力ある職種なので、その環境を整えようと考えました」。しかし、現実には他地域から人を呼び込み、移住・定住につなげることは、ハードルが高いことを知る。
一方、岩手県沿岸部を運行していた三陸鉄道は、釜石市から宮古市までの区間が津波により被災。再開に向け工事を進める中、復旧復興へ向けたシンボルとして2人の「鉄道ダンシ」キャラクターを誕生させ、声は著名な声優に依頼した。しかし、キャラクターは震災から7年近く、十分に活用されていない状況にあった。
これに平舘さんは、新たなまちづくりのヒントを得る。幼い頃からアニメや特撮ものが好きだったこともあり、
世界に誇る日本文化の「アニメ」を大槌町から発信しようと構想する。賛同してくれたのは大槌町の仲間、宮古市・釜石市・岩手県職員の有志や、復興支援で大槌に滞在する人、震災をきっかけにU・Iターンした人である。
集まった仲間は、三陸鉄道ダンシキャラクターの周知と、被災地の現状を世界に届けるため、「三陸コネクト
フェスティバル」開催へ動き出した。しかし、大型のイベントを開催するためには、多額の資金が必要だった。
以前、CF運営に関わった経験のある平舘さんは「イベントの広報と資金調達をできるシステムは、CFだと確信していました」という。

初めてCFを経験した「フェスティバル2018」。聖地・大槌を世界へ発信。大槌史上初の一大イベント成功へ。

フェスティバル2018の成功の鍵になった人物が、芸能プロダクション代表・元アニメソング歌手の佐藤ひろ美さんである。「大槌町出身のひろ美さんに、東京で行っているイベントを、大槌で開催できないかと相談しました」。
課題は資金繰りだった。携わった経験が多少あるとはいえ、CF運営に不安のあった平舘さん。CF企業を紹介してもらったものの、イベント資金はもとよりCF企業への発注資金さえもままならない状態であった。試行錯誤するが、2018年2月開催のイベント予定日は刻々と近づいていた。そんなある日、メンバーの1人から朗報が入る。「復
興庁の平成29年度専門家派遣集中支援事業の支援対象になるのでは」という話だった。早速2017年10月半ばにエントリーし、採択された。「ようやくCF企業とつながったのは、開催日からさかのぼれば、ギリギリのタイミングでした」と当時を振り返る。また、紹介されたCF企業は、偶然にも以前紹介された事業者だったことで、公開へ向け歯車は勢いよく動きだした。
地域住民へ、アニメの聖地化を周知することにも力を注いだ平舘さん。2018年2月。初の「三陸コネクトフェスティバル」は、岩手県の小さな港町・大槌町に、全国から2000人もの集客を得た。参加者の多くはアニメを愛する若者で、沖縄から訪れた支援者もいたという。「大槌町史上初めての大きなイベントになりました。町役場も住民の皆さんにも、とても喜んでいただけました」。

復興庁クラウドファンディング支援事業を活用した2回目「フェスティバル2019」では、公開から目標額達成まで、3日の快挙。

2018年の同イベント終了は同時に、平舘さんと聖地化委員会メンバーの「2019年」へ向けた
スタートになり、新たに復興庁クラウドファンディング支援事業にエントリーし、専門家の支援を受
ける。
2回目「2019」開催へ向けたCF公開では、直後から多くの支援を受け、公開から3日間という驚異的な早さで、目標額の140%を達成。支援者へのリターンの一つ、フェス1日目・2日目それぞれと両日の入場優先権付き「VIP席入場券と特製リストバンド」には、優先トイレ使用権や休憩所使用権も付帯。「三陸ダンシギフト」も人気を博した。三陸の夜を堪能する「佐藤ひろ美さん主催のコースチケット」、産地から直送する岩手牛や豚しゃぶセッ
トを詰めた「山の幸ギフト」や大槌荒巻鮭・旬の一夜干しの「海の幸ギフト」などの地域の特産品リターンも支援者に喜ばれた。支援者全員にお礼状を送った平舘さんは「前回イベントの支援者に、イベント終了直後から細やかなコンタクトをとってきたことも、大きな成果につながったと感じています」と話す。
初回は、アニメ関連タレントの起用で、CF支援者やイベント集客を図った。2回目となった今年は、被災した三陸鉄道が 3月23日に全線開通。それを祝うイベントとしてフェスティバルは30日、31日に開催された。「今回はタレントさんのお力をお借りすることなく、既存の鉄道ダンシキャラクター2人と、新たに私たちが考案した鉄道ダンシキャラクター1人、そして三陸の山海の魅力を発信する企画です。前年度の復興セレモニーでは、地域の被災状況をお話しましたが、今年度は復興へ向かう新しい大槌町、三陸の現状を知っていただきました」。
ところで、CFを利用する際、世話役のような立場で利用者に寄り添ってくれるのがキュレーターだ。平舘さんは「何も分からない私たちを、丁寧に、時に厳しく導いていただきました。多くの教えを学んだと思っています」と話してくれた。